辰姫③ ~ 黒髪

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いまも昔もヒトの考えることって実はあんまり変わらない。
日本舞踊のストーリーを読み解いて、そこに登場するキャラクターたちの現代にも通じる想いを
お伝えしていきたいと思います。
もしかしたら、あなたの悩みを解決するヒントがみつかるかも…

今回は、辰姫が登場する狂言「大商蛭子島」の最大の見せ場「黒髪」のお話です。

|幸左衛門内奥座敷の場

前回の「辰姫② ~ 大商蛭子島」で、狂言「大商蛭子島」のあらすじをお話しましたが、正木幸左衛門
(実は、源頼朝)の妻、おふじ(実は、伊藤祐親の娘、辰姫)は、いくら相手の願いを叶えるためとはいえ、
駆け落ちしてまで一緒になった最愛の人をそう簡単に他の女性に譲ることなんてできたのでしょうか。
答えは否です。そうでなくても、普段から夫が営んでいる寺子屋に通う年頃の娘たちにさえ嫉妬している
おふじです。一度は承知して夫の背中を押したものの、おます(実は、北条政子)との仲睦まじい様子を
見ているとモヤモヤしてきてしまう。そして、2人を2階の閨へと見送ったあと、ひとり鏡台に向かって
黒髪を梳きながら、嫉妬に胸を焦がします。
これがこの狂言の最大の見せ場です。そして、この場面で流れる曲が長唄の「黒髪」です。
その後、乞食坊主の清左衛門(実は、文覚上人)が邪気を払うとされている
「九字真言(くじしんごん)」
を唱えて数珠で打つと、辰姫の嫉妬心は不思議と消えます。

|黒髪

古来より、和歌や物語など文学作品において、黒く艶のある美しい髪は女性の美しさを表すシンボルと
されてきました。そして、和歌や物語のなかでも黒髪の長さや乱れは女性の心情を表現する比喩として
使われてきました。
長唄「黒髪」は、愛しい人を想って独り寝る寂しさを嘆く女性の心情を描いています。
目が覚めると一面に雪が降り積もっていて、それと同じようにこの艶やかな黒髪もいつか白髪に変わって
しまうのだろうなぁと、移り変わっていく時の流れの残酷さや無常観が描かれていて、女性の一生を詠って
いるといわれています。
この曲は、前述の歌舞伎狂言「大商蛭子島(おおあきないひるがこじま)」の一場面で使われたことを発端に
江戸で人気を博した後、上方では地唄に移行して大坂でも大流行しています。
作詞は初代桜田治助、作曲は初代杵屋佐吉(地唄は湖出市十郎)です。一説によると、浄土真宗本願寺派の
蓮如上人が作詞したとも言われています。
京都の花街では、舞妓から芸妓へ衿替えをするわずかな期間だけ「黒髪」を舞うことが許されます。
この曲を舞うことで、芸妓としていきていく覚悟を表現するのだそうです。
この期間、芸妓になる舞妓は新婚の女性がする先笄(さっこ)という髪型に結い替えて、お歯黒をつけます。
その昔、結婚が許されていなかった芸妓に、お嫁さんの疑似体験をさせていた名残だといわれています。
*地唄筝曲にも同名の曲があり成立については諸説あります。

|最後に

いかがでしたか。
鏡に向かって髪を梳く、この場面の辰姫の狂気ともいえる嫉妬心は怖いと映るかもしれません。
でも、この状況を考えてみると誰もが抱く当然の感情のようにも思えてきます。どんな理由があるにせよ、
最愛の人を他の誰かに譲って、目の前で仲良くされるのはどう考えても耐えられるものではありません。
辰姫の気持ちを考えるととても胸が苦しくなります。
「黒髪」には、想いを振り切って覚悟を決めるという意味合いが込めれれているのかもしれません。

 

 

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